有用性の真偽
 どの名医にも好きな生薬や頻用処方があり、特に漢方や生薬の扱いでよく見られるのですが、古人においては「スギナ」「ドクダミ」「松葉」「よもぎ」「甘茶」などといった民間薬を好んで万能薬として、ある一定症状のある方に万病薬としてお勧めするケースがあります。これは古来の富山のくすり行商なども同じもので、何にでもよい伝承万能薬というものがあったものです。最近では「NONI」や「アガリクス」「茸類」などですね。メディアの影響で火がつくと、一見つまらなかったものが、とんでもない販路が開き、人気商品になり需要が生まれます。しかし生薬には独特の性味・気味・陰陽の性質があるので、万病に効くというというものは残念ながら無いのが現状で、性質が陰陽に大きく傾いていない「平」である(副作用が出難い)もので、日本人の統計的に多い体質に、効果のあるものはそういった便利な販売をされがちです。販売側も何でもよければ楽ですね。しかし本当にそういった選定でよいのか、どういった体質にどういった生薬が効果的に働くのかというのを、販売者・取扱者は把握をしておくべきなのです。伝承薬・民間薬など、理屈は薄々あるものの、何より伝統を重んじた迷信や宗教的薬効を唱えたものにおいては、少し検討も必要です。そうやって昔の怪しげなクスリは消えていきました。
  生薬で言えば、中医学理論や生薬学で、キチンと開示された多くの情報源(中国語が多いです)が当店には多くございますので、それらも把握しておくのが、生薬を選んであげる側の対応であるべきです。国内でもそういった販売が減ってしまい、大方が既製品として加工品が出回ります。何でも効くといった真偽の判断が付かず知らずに何気と消費されているものは結構多いものです。例えば全ての虫刺されにアンモニア水を万能試薬として使う方もいます。実際には蟻酸対策くらいにしかならない様な、こういった伝承薬や植物利用はまだまだ多いですので、この辺は有用性を把握して販売する様に心掛けております。新しい商材が飛び出る事もありますが、あまり飛びつかない様に!そのあとに何らかの副作用が報告されています。特にダイエット関係は御注意を!聞いた事もない新商材は質問されても、私も真偽が分からないのが正直な回答です。

国産品/メーカー規模の是非
国産品を良品として勘違いする方が未だに多いのが現状です。もちろん国産良品は沢山あると思います。ただし薬草などより、地域特産穀物類が得意でしょう。沖縄産ウコン・屋久島のガジュツなど一流とされる生薬利用は例を挙げればキリがないですが、世界レベルで生薬を見ると、小さな国土面積の日本のものが、世界のものより優るケースは本当に少ないのです。ウコンもガジュツも中国・中近東のよく肥えた地域のものとは全く異なります。土地のスケールが違います。中国産は粗悪品の象徴の様に言われますが、生薬の殆どは中国の特産物です。当然地場産業ですから、特級品も多くあります。多くの良品は台湾と日本に流れるとか・・・。日本国産品は出元(農家)が確めやすい事や、農薬使用の確定などがし易いので、安全面で選ぶ方や、地域復興の意図で選ぶのは「アリ」かと思います。中国僻地では数十年前に禁止された危険な農薬を禁止と認識せず使用するところもあるらしいですから・・。
 当店の考え方として、国産だから薬効が高いという意味合いでお勧めするのは、食品以外でしたら、漢方用に使う大和当帰や大和白芍、信州人参など限られたものくらいです。これも特徴があるので、中国産当帰尾の活血作用などは日本産に無いものなので、使い分けも必要です。効能だけでなく安全面で国産品を評価したい方には、中国産でもよいので農薬管理された生薬卸から入手する事が大切な事をお話しています。知られていませんが生薬卸は小さな会社がとても多くあり、安さで引き合いも多いですが、その質の悪さから当店はお断りしています。自社で農薬残留濃度規格を作って、キチンと全量生薬に農薬検査を実施している会社は設備と管理上、国内に片手におさまる程度しかないのです。食用に回される生薬(ハトムギなど)はあまりお勧めできるものは無く、生薬輸入時の法律は現状はまだ甘く、安全性のあてになりません。幸い厚生労働省に今後は規制に圧力が掛かる様です。
  生薬のレベルが入手会社ごとに本当に大きく異なります。同一物か?と思われるものも一部あります。当然安価な卸からバルク単位で入手すれば単価は驚くほど安いですが、あえてそれは避けています。鮮度の問題もあります。生薬の場合は国産品を選ぶより、メーカーや入手先を良く選ぶ方が結局賢明な買い物になります。当然、生薬毎に違った生薬卸を当店では選びます。一社に絞ればコストメリットはありますが、得意な生薬の幅が違いますので、当店は数社少量づつ、良いところ取りです。年毎どこから入手するか収穫出来によって変えます。卸会社も心得ていて、良品が入手できれば一目に吉報として知らせていただけます。保険調剤の医家向けには行われない原料に拘るお店ならではのお取り引きです。
 お米・穀物類などなら無化学肥料栽培やオーガニックのものを選べば間違いないですね。これは国内品が多いですが、それに固執する事はありません。生姜は意外にもインド産オーガニックより、国産品が気味が高く良かったですね。逆にハーブなどのオレンジの皮は国産よりヨーロッパのオーガニック産は最高でした。各国の世界的特産品の品質はやはり良い傾向にあります。
 ウコンなどの既成品・加工品は沖縄産と書いていても、多くは中国産のブレンドですのでお気をつけて・・。表記目当ての99%中国産も生薬業界には珍しくない話なのです。既製品しか扱わないショップや薬局は当然知る由もありません。卸業者の言われるがままです。味を見れば低質なものが本当に多く出回っているものです。こういったトリックはメーカーの大小はあまり関係ないもので結構いい加減です。大きなメーカーは法的な逃げ道はキチンと作っていますが・・。

スモール・イズ・ビューティフル
 一部の方にはエコロジーやスローフードは流行と思われている傾向もありますが、その考えの根源を理解しながら実際の行動に活用すれば、その応用は無限大です。日本人に「発想や創造性」が弱いのは、根本を理解して、さらにそれを実用に活用する手段において不器用だからです。技術や「巧み」が日本人にあるのは「個」に対する見方が得意だからです。しかし環境倫理はその逆で、大きなものが見えないと理解できないものです。日本は風土柄、狭い島国ですから、どこに行っても誰か人間が住んでいて、本当の自然と一対一になる事も少なく、空からの創造性より、人間社会相互における協調と規律性ばかりが問われ、学校でもそればかり学ぶが所以でしょう。大きなものが見えにくい環境作りは今後もますます進むからこそ、どうしても認識と配慮に欠け易い部分でもあるのですが、本来これなしには何もありえない事を知っておくべきです。「大」と「小」を上手く融合させて考える事のできるバランス感覚が大切です。
 「small is beasutiful」はシューマッハーの提唱で有名ですが、その一説の引用 「モノは足りさえすればよく、多すぎるのは悪であるという思想がどこを探しても見当たらない間は、資源消費の速度を落としたり、金持ちや権力者と貧乏人や一般大衆との関係を調和させる可能性はありえないのである<著書抜粋>」 は御存知の方も多いのでしょう。 「悪である」とは翻訳の問題もあり極論ですが、しかし最新技術や大量なお金を多くの戦争やテロで使われている背景を唱えているのであれば言い過ぎではないかもしれません。
 「大量」という認識を利己的な収支ではなく、それが社会的・地球環境的にどういう役割を果たし循環するのか。多くの経営者にとって、スモールには興味のない話ですが、トップに立つものこそ、あらゆる意味でトップで考えるべきです。作りたくもない法規制を毎日作らざるを得ないのは、皮肉にも一番悩んでいる利己的な行いを行うもの由来なのです。 考えて欲しいものです。 それは「地球環境にとって」在るべきものなのか・・・負荷をかけて自分だけの利益を追いかけていないだろうか、「社会環境」という狭い範疇に縛られて生きていないか?環境にとって負担を与える事は、生態系全てに負荷を与える事を意味しますので、自分がどういう働きかけをしているのか認識すべきでしょう。 スローライフは全て小さくしよう!という意味でなく無駄なものや効率・利便性への問いかけでもあります。精神面は逆に大きく広く、無駄は極力小さくする生き方は、ここ暫くの生き方として面白い循環を作れそうです。それが全てではありませんが。生産者・販売者に対する消費者側の問いかけや運動も欠かせないはずです。ボイコット活動などは欧米では盛んです。スローライフを単に「美味しいものを食べ、よい環境で健康を維持し、ゆっくり暮らす」といった、リタイア生活を意味していると考えないで下さい。スローライフの本質は、かなりアクティブな生活になるはずです。 前述の通り、利便性や効率化に対する問いかけでもあるので、自ら時間を割く事も意味するからです。お昼休みのイタリアの習慣は見習うものがありますね。あの血の気だけは何とかしていただきたいですが・・・。「大量効率」「依存性」「利便性」、具体的なところでは「サプリメント」「ファーストフード」「農薬」。これらをあなたの生活から奪えば、かなりの負担になるでしょう。ここまできた現代において、全て削除する事が賢いとは思いません。これからは考えて生活する事が賢いのだと考えています。
 「スローフード」という言葉はファストフードによる味の均質化が起こっている事に危惧を抱いたイタリアの人たちが、地元の食材と「食」にまつわる文化を大事にしよう!と取り組み始めたN.P.O運動で、ファストフードに対する問いかけでもあります。これはオーガニックな生活へも繋がっていきます。