必須脂肪酸とアレルギーやアトピー性疾病の関係
(自然科学の一般論)
■ リノール酸:リノレン酸=4:1

<必須脂肪酸とその配合>
脂肪酸は多くありますが、必須脂肪は人間の生命維持のために必ず摂らないといけない成分のひとつです。 外部から摂らないと体内の他の脂肪酸から合成ができないためです。 下記の通り、オメガ3とオメガ6に分類されますが、混乱を避けるため各代表として α-リノレン酸とリノール酸で説明をします。
理想は[オメガ3代表α-リノレン酸]: [オメガ6代表リノール酸]=1:4の摂取とされています。

リノール酸(n-6系)とリノレン酸(n-3系)はバランスよく共存する事で、 お互いもつ正反対の作用を上手くコントロールしてくれます。 そのため必須脂肪酸のバランスが上記の通り乱れずに摂取維持できれば理想と考えます。

必須脂肪酸

必須脂肪酸は本来、地産地消(地域生産地域消費)で、季節の天産品からバランスよく摂るものですが、 現代食に、もはやその要素は少なく、意識をしていても、必須脂肪酸の食品からの取り込み率は リノール酸に大きく偏っています。 ただしリノール酸も必須脂肪酸で、生理上重要なものですので完全否定するアドバイスは無知な行いです。 リノール酸に偏った体や生活スタイルは、それから由来するアラキドン酸など、 アレルギー感作を受けやすい生理活性物質を生む前駆体作りに大きく関与します。そのため なるべくその要素を制限してくれる「αリノレン酸」を適度に摂ることで修正します。 αリノレン酸がバランスよく存在すると、リノール酸は有益に働き、 過剰に炎症性やアレルギー誘発を助長するマイナス要素を牽引してくれます。
具体的には細胞膜のリン脂質からホスホリパーゼA2により細胞質中にアラキドン酸が遊離され、 これがシクロオキシゲナーゼよりPGG2→ プロスタグランディン/プロスタサイクリン/トロンボキサンが作られ、またロイコトリエンなどの 生理活性物質の生成にも関係し、これら最終的な生理活性物質イコサノイドが、 アレルギーの代表的症状である血管透過性亢進や好中球や好酸球の遊走(痒みや炎症/赤み)、 気管支収縮(喘息)などに大きく関与します。ここでは詳しくは割愛します。

体内リノレン酸の補填は、まじめに行えば、通常2−3ヶ月で修正できていますので、 変化がなければ他の要因を考えます。変化がないのに長年行うものではありません。 それでもリノール酸:リノレン酸=4:1を維持するライフスタイルは、健康上決して 無益なものではありません。

 

■ αリノレン酸やリノール酸が多く含まれるもの

リノール酸の1/4であるとはいえ、それだけのαリノレン酸を摂る事は 意外と難しいものです。そのため、最初はリノール酸摂取量そのものを制限しないと難しいです。 重症や慢性でなければ、αリノレン酸の摂取に一時期努める事で、そのバランスの多くは解決されます。 αリノレン酸含有オイルの殆どは熱を掛けない調理が必要で、サラダやドレッシングの材料にします。 そのままジュースや牛乳に混ぜて飲む方もいます。 いずれのオイルも手作り化粧品材料や保湿オイルとしても、アトピーに非常に有用でリピートの多いオイルです。 体質改善やダイエットにもよく使われます。

<αリノレン酸>

<リノール酸>

<アラキドン酸>

リノール酸過剰症は、食材ではマーガリン・マヨネーズなどの加工品や調味料、 スナック菓子の低質な油分から体に蓄積される例が多いです。 これを制限するだけでも大きく変わると思われます。 青魚はαリノレン酸補填にはよいですが、アラキドン酸やヒスチジン(アレルギー様生理活性因子) も多いので過剰に推奨するものではありません。 牛乳にもアレルギー体質に悪性の因子はありますが、その量から考えて 絶対菜食主義の倫理観をもたないかぎり、完全に断つ事までは勧めません。 αリノレン酸オイルの分散剤として服用する事は、吸収面においても有益です。 どのαリノレン酸高含有オイルもリノール酸は多少なり含まれており、 その量は通常の牛乳摂取量に比べると少ないです。 ただし水代わりに、ガブガブと牛乳を飲む事がよいという、昔の栄養教育を擁護するものではありません。

多価不飽和脂肪酸率はアマゾングリーンナッツオイルが92%、麻の実が80%、亜麻仁油が72%、エゴマ油が75% といわれていますがリノレン酸(n-3系)の配合量だけを考えるといずれも同等です。 中医学における体質判定で陰虚体質の方や、肌が乾燥気味で体力 持続力ののないタイプ、慢性的なアトピー性皮膚炎などには、 良質なn-3系リノレン酸の不足も視野に入れてみてはいかがでしょうか。 医薬品の助けなしに、これのみで体質を強化できている例は、 当店のお客様の声だけを聞いていても少なくありません。 外用塗布でのコスメ的な保湿オイルとしてのご利用も可能です。

上記のお勧めの食事生活を勧めるものではありません。 多少の動物性原料やお勧めとしない食材にも、しっかりとした緑黄色野菜があれば、 上記アラキドン酸カスケードは理屈の様に起きるものではないと考えています。 本来の色がしっかりでている野菜類は、酸化による悪因子への変換を抑える ポリフェノールやフラボン類の自然の防御機能がかなり働くはずです。 季節野菜や果物を、ありのまま食事に添えれば過剰な悪性として働くイコサノイドが蓄積するとは思えません。 (イコサイドは多種ありますが生理上殆ど良性として機能します) ただし、全般的に思えるのが野菜の量が皆の認識では少なく感じます。 キャベツ・レタスなどカサの大きいものは、数切れだけで通常のお皿がてんこ盛りになります。 サラダの場合、大きなボールで皆で摂るスタイルは外食以外なかなか見ない光景ですが、 軽質な生野菜は一般家庭のサラダとして少なく感じます。お好み焼きはそれを濃縮しているので、 緑の野菜補填としてはよいですが、アレルギーにはグルテン類が引っかかるかもしれません。 ただ広島焼き風はよいと思いますし、通常のものでも充分でしょう。 トマトなどはしっかり摂りたいです。 その他、紫芋・桑の実ジュース・ブルーベリーやブラックカランツ、 お茶ならルイボスティー・中国茶などポリフェノール源は豊富で、 これらが西洋風の食事にバランスをもたらします。 単品料理にならなければ、多くはお互いがよい要素を出し合うものと思われます。 グレープシードオイルはリノール酸が多いのが一見欠点と思われますが、 ビタミンEや抗酸化物質/プロアンソシアニジンなどポリフェノール類も多いので、 組成量ほど悪性のオイルではありません。 数字ばかりしか見れない学問主義は、時には臨床に生きない事があります。 ホリスティックな見地が必要となるという事です。

一方、懐古主義などを唱えながら玄米食を勧められるケースも多数見受けられますが、 栄養学的見地からはアレルギー関連に玄米食のメリットは少なく、 どちらかというと、それによる二次的な悪質な油脂類の制限と消化の悪さから来る瀉法 (デトックス)が効能を出しているケースが多いと思えます。 アトピーや特定疾病にコレがよい!と一点のものに集中する狭義なものは、 ホリスティックな要素に欠けているのでご注意下さい。

 

■ アレルギーやアトピー性皮膚炎はαリノレン酸対策だけで解決できるのか

バランスに偏りがあるとアレルギー因子を増やす事があるという事を漠然と知っておけばよいです。 ただしこれらアレルギー因子が生活上多くても、アレルギーが起きない人の方が多いです。 不摂生すると必ずアレルギーが起きるものでもありません。 サプリメントや健康食品を売るには都合のよい理屈ですが、偏ったアレルギー因子から、 実際それを引き起こす生理活性物質イコサノイドの中でもアレルギーに関与するもの のみが過剰に表面化しなければよいだけです。多くの要因があり、食品だけの問題ではないのが現状です。 中医学的考察のなかで、その他の要因について記述していますので、参考にして下さい。
結論は人間は物理的なモノの動きだけで全てを解決できない事を知るべきだと考えています。 モノに溢れるこの時期は、現代の風潮に洗脳されています。 本来治療方法はもっと多岐に渡り、もっとホリスティックであるはずです。 端的な見地は、何ら都合のよい第三者の利益に繋がるものが多いです。

ただし上記の科学的考察による「正しい脂肪酸バランス」があり、 それは体にとって有益である事は知っておいて損はありません。 外食やスナック菓子の低質な油分摂取が一番悪質ですので、それを抑える事は財布と体にとっても有益です。 お付き合いや、外食というのは他人・家族との接点として、重要な位置にあり、 生きる上で大きな情報源や手段・エチケットにさえなっています。 これが体の栄養バランスを崩す場所とはいえ、完全に避ける事は現代の生き方にそぐいません。 こういった時「のみ」サプリメント類や上記極論の知識を活用したサイドメニュー選びで、 偏ったバランス是正を試みるとよいです。 ただしどのサプリメント類も飲み続けて変化のない場合は、別アプローチを自分という 人体実験の中で考えながら行う事が大切です。

 

■ ビタミン類・サプリメントなど

これまで不足している栄養素をあげて、ビタミン剤や補助食品が 薬局に沢山並んでいましたが、現代の食事において栄養学的見地からビタミンB群の欠乏症は殆どありません。 ニキビ・肌荒れにビタミンB2/B6、パントテン酸やその他補助酵素などがよいと、 色々とメーカーも宣伝していますが、服用して症状が改善する例は近年少ないのではないでしょうか。 戦後の日本は栄養状態も悪くビタミン剤であらゆる症状が改善したものですが、 現代は逆に過剰症の方が多いものです。 漢方の問診においても、補う処方ばかりでなく、 逆に瀉す方剤作りが多いです。 いわゆる解毒やデトックスという名で有名になってきましたが、 モノに溢れた現代独特の現象は栄養学的に見ても同じ事が起きています。 強いて言えば、そのバランスが取れていないのが近年の大きな現象です。 糖分や低質な脂肪分を主にしたカロリーを摂り過ぎているのが現状ですが、 一方 脂肪の中でも必須脂肪酸はなかなか摂れないので現代の不足したもののひとつです。 これはアトピーをはじめ、皮膚病や各種疾患においても同じ事が言えます。 自作の犬猫の皮膚病や慢性疾病にも同じ事が言えます。 ビタミンは現在お店で供給しているほど、実際の需要はなく、他の因子でそれを牽引していますが、 実に要領の悪い方法が多いです。摂取を控える気持ちを持つ事で、 断食や特定成分を一切断つ方法にはあまり感心しません。 生物として見て、加工品の制限はあり得ますが、天産品の制限は遺伝子レベルの疾患以外はどうか・・ と思えてなりません。

陰陽五行説をベースにした中医学の弁証は、からだのバランスをとる治療です。 しかし実際の現代治療は、あまりに基本的すぎるのか、その重要性が見過ごされがちです。 夢のような薬品や化学合成品の誕生を待つ風潮にありますが、形になるのは流行の健康食など 何ら営利活動にすぎません。 医薬品は、人間の体を左右させるもので、考え方によっては非常に難しい面をもちます。 すなわち健康食品などを売ったりメディアで取り上げるには、生理活性が著しく低く副作用がない事が条件です。 体に大きく影響を与えない(生理活性は少ない)もので、その時代の需要に合うものが 商材として面白く取り上げられて経済の活性化を図っています。 経済市場の賦活と危険な商材が溢れる事を抑止する意味では重要なものとも言えます。 ただ真剣に医療応用を考えている方には、メディアの情報は医薬品の域を脱しない事が原則ですので、 物足りないケースが殆どであると思われます。 テレビ・雑誌などは、新鮮な情報源とはなるものの、淡い期待に留める事程度としておいて下さい。 メディア発信側もそれが理想なのです。

玄米食や懐古主義、極端な毒性提唱をする、健食ビジネスやアトピー業者の殆どが、 実際の医療にはとても通用しない 少ない例題と極論を根拠としています。 逆に西洋医学のみの知識と、メーカーによる動物実験の統計論だけで、むやみに漢方薬処方する事も 大きな誤解を生んでいます。柴胡剤や八味丸に掲げられる現在の添付文書の副作用報告は、 誤診によるものとしか思えず、少なくとも舌診にて肺陰など痰湿の有無を見分けていれば、 起きない例であったでしょう。小柴胡湯は肝炎の薬でも後期の風邪薬でもありません。 本国の老中医師は大きく嘆いています。
メディアに振り回された商品が溢れていますが、目の前の食材に意外と多くの必要とされるものが眠っているものです。 バランスのよい天産品を摂り続けていれば基本的に後天的な偏りはありません。


■ 現状と本音

お店に行けば、多くの店員は相談員というよりも販売員ですので、何かを売らなくてはならないものです。 それが悪いとは言いません。 「治してさしあげる」という事に、志やプライオリティを持って接してくれる人間には 残念ながら今日ではなかなか出会えない事でしょう。本当の治療は治療する側も驚くほどの消耗をしています。 なかなか全員に提供はできないものなのです。 まずは本音を話せる治療者探しが大切です。最初であり最後でもあります。 相手が人間の場合、互いのタイミング次第で、 治療や販売方針が変わる事もあるのでしょう。 医療においてあってはいけない事ですが、実際の現場では避けられない事です。 皆が常に利益を得る事を考えています。 それは決して悪いことでなく当たり前の事です。 (お金のためだけでなく、自己実現のため・健康のため・親子供のため・愛する人や生命のためという意味でも、 様々な利益を追求して生きています。 人間は非常に勝手な生き物です。また地球上で一番破壊性をもつとも言われています。 子供は意味無く、物を壊し、生き物をいたぶり、それを喜ぶ風景を見て、破壊行為は本能的であり、 意外と意味のあるものとも思えます。 (周囲環境を変えたいのではないか?)
結局は患者の出方次第で、医師の治療や店員の販売方針は変わっていくのかもしれません・・・。 何も恐ろしい事を言っているのではありません。お金出すのだから、治しなさい!でもなければ、 治してあげるから医師に従いなさい!でもない。 「治療」は通常の希薄な物物交換にはなり得ない事だけを言っています。 これを理不尽というなら 人間の本能的自由を束縛するため、何ら お金などの汚い手段で手を打つ事になるのでしょう。医療と政治にも見え隠れする部分です。 自由には皆が憧れますが、自由の国アメリカと思い移住する友人は、その反面を大いに感じると語っています。 欲深き人間こそ人間らしい・・・。

 

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